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第4章 case2 【貴方ガ欲シイ】 2

その疑問は解かれることなく、うやむやのまま今に至っているけれど。

囲われる時間が長くなるほど、隣にいるのが当たり前になる。感覚がマヒする。それによって、自惚れていた。無意識に。

斎にとって私が一番なのではないかと。

私自身は逃げたいと思っているけれど、彼にとっては私が一番だからこそ、私は仕方なく捕まっていたのだ、と。

紗香が一番だ、とさっき言ったわけではない。あのシーンでは、定かではない。

けれど、私が一番、とは限らないとも言える。

完全に自惚れていた。その事実を認識し、頭を殴られたような衝撃によって、

目が覚めた、と思った。

と同時に、無理にここにいる必要はないと再確認出来たから、今のうちに荷造りして、この混乱している私を落ち着かせる為にも、

盆だし家に帰る事が必須だ。彼から離れることが必須だ。これ以上振り回されない様に落ち着くことが、必須だ。

方向性が決まって立ち上がると、隠れて準備していた荷物を手に取り、素早く部屋を後にした。

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