テキストサイズ

contract

第25章 case10 【私ハ貴方ノ手ヲ握ッテ】 2

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

唸る風と震わせる雷の音に混じり、叫び声が響き渡った。

・・・誰の、声?

「絢乃、この部屋から出るな」

蝋燭に火を灯したけれど、漠然とした不安が私を覆いつつあったから、

斎は部屋を出ず、いてくれた様だけど、あの叫び声に、斎は足早に出て行こうとする。

「待って、私も」

「ダメだ。確認してくるだけだから」

「嫌、一緒に」

咄嗟に腕を掴む。

何故か、行かないで、とは言わなかった。違う、言えなかった。

斎の表情が、強張っているのが、蝋燭の灯を通して解ったから。

・・・何か、あった。

それも斎にとって良くない事が。

「絢乃、確認だけだ。それ以上は何もありはしない」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ