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第26章 case10 【私ハ貴方ノ手ヲ握ッテ】 3

---斎side---

「ここにもいない。何処に行った?

・・・絢乃」

地下で仕掛けた術に呼応した筈の、絢乃の気配が、可笑しい。

始めは1階にいた気がするのに、今は何故か屋敷中に、気配がする。

愛しい気配は嬉しいけれど、亡霊の様に定まらない気配は、苛立だしい。

占めるのは焦燥感。

まさか、桜の樹を燃やすとは・・・。

的場はあっさり殺られるし。

的場と永依にはある程度の力を移行させておいた筈だ。

ただし冷静でないと行使出来ず、何か感情を高ぶらせて、

人間としての意思が我が力を上回れば、宝の持ち腐れと同じで使えない。

「人間ってしぶとい」

そして、強くて綺麗で自由だ。

「手に入れたい」



『絢乃』と『自由』を。

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