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第26章 case10 【私ハ貴方ノ手ヲ握ッテ】 3

・・・時は少し遡る。



閉められたドアには、鍵がかかってはいなかった。

ある意味自由。

けれど『命の保証はしない』とはっきり言われた以上、この食糧庫から出る、という気持ちは、

はっきり言って萎えていた。

全身を覆う感情は、底知れぬ恐怖。

斎に対して、何度も逆らった事がある。殺せるものなら・・・と言われた記憶もある。

それでも殺される事無く、寧ろ欲されていたと感じていたので、

私を殺す筈がない、と思っていたのは・・・驕り?と思いつつも、やはり斎が私を殺すとはどうしても思えない。

人を食らうバケモノと知らされても、何処かそれを受け入れられない私は、

既に斎に囚われているのだろう。

斎が今現在、私をどう思っているかは別にして。

底知れぬ恐怖は斎自体では無く、斎を取り巻く背景。私は知らない事が多すぎる。

まだ何か知らされず、隠されているかも、という疑念がぬぐえない。

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