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第26章 case10 【私ハ貴方ノ手ヲ握ッテ】 3

意識して言葉を選んだつもりはなかったけど、

逃げる対象に“斎”という言葉を口にした時、明らかに均さんの表情は強張った様に見えた。

屋敷の外、夜で暗い場所でありながら、

何故か、解った。

均さんは、私を斎から引きはがしたい、と。

「帰る」

「待てよ」

「離してッ」

掴まれた腕を引き放す為の攻防戦。普通なら男の力に叶うはずない、のだけど。

『行って!』

不意に幼い子供の声がして、何故か一瞬均さんが腕を離した。

不思議な現象に、一瞬きょとんとしつつも、今しかないチャンスに、急いで走って玄関へ戻る。

戻って、鍵のかかっていない玄関扉を開け、急いで閉めて内鍵を掛ける。

「待てッ早まるな、絢乃ッ」

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