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温もり

第16章 十二日目

 ラディが出て行ってから長い時間、誰もそこには来なかった。
 絶望と恐怖から二人の口数は減り、ニニ五は啜り泣いた。零九に彼を慰める事など出来ず、ただ、独りではないのだと言う様に、そばに居てやる事しか出来なかった。
 それもラディの嫌がらせだろう、食事前にはあったはずの服は気づけば無くなり、二人は全裸で過ごす事になっている。互いに見せると言う羞恥心はほとんど無くなり、酷く寒い訳ではないので、そこまでの危機感はない。あるのは、暴行の恐怖だ。

 そんな二人の耳に扉を開く音が聞こえ、ほぼ同時に檻の奥へと逃げる。少しでも遠くに逃げたかった。
 研究員達は、全裸の二人を見て笑う。
 身長も高く、骨格もしっかりとしているが、全身傷だらけの零九。
 背は平均より高いが、細身なニニ五。
 壁もなく、隠せる場所もない為に体を縮こませて隠そうとしても、研究員達の嘲笑に羞恥し、涙が零れそうになる。

「服なんか着てるよか今のがずっとお似合いだぜ?」

 そんな言葉を吐き捨て、鉄格子を悪戯に叩き、二人を怯えさせ、研究員達は笑う。
 前を隠せば後ろが見えると笑い、やめろと叫べば吠えたと笑う。

「もう、やめて下さい……」

 ニニ五は耐えきれずに泣き出し、零九の心も羞恥に屈し始める。
 どうあがいたところで、研究員達の嗜虐心を煽るだけだ。なにをしたところで、飽きてもらうのを待つしかない。零九はそれを理解している。が、心が納得せず、悲鳴を上げる。

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