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温もり

第8章 四日目

「そんな怪我してて、勃ったの?」

 ラディは声のトーンを変えずに質問をする。
 自分としている時は、彼の神経系を多少弄り、性衝動を高めていた。だから、激しく何度も行ったのだが、今の彼はそう言った手助けと言う物もなく、しかもこの状況では、性欲など湧かないだろう。

「首を、締、めたら勃、つって……」

 零九の腫れた頬を伝う涙は止まらず、拭おうにも痛くて出来なかったのであろう、はっきりと残る涙のあとが一晩中泣いていたのだろうと想像するに容易い。

「……そう、辛かったわね」

 ラディは同情的に呟く。

「うん……」

 零九はその偽りの優しさに縋り、耐えきれなくなった嗚咽を漏らして泣き出す。
 彼も馬鹿ではない。彼女が自分達に何をしたのか、こう言った事を含めて自分をこういう状況に陥れたのだと理解している。
 だが、たった四日間で、そんな彼女でも良いから誰かに縋り付かなくては気が狂いそうだったのだ。

 食事を終え、排泄物の処理をし、部屋から出て行くラディを、零九は縋る様な目で見ていた。助けを求める相手が違う事も解っている。どんなに命乞いをしても助けてくれない事も解っている。
 それでも、今の零九にはラディしか縋る相手がいなかった。

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