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温もり

第10章 六日目

 その日、ラディは研究員から呼び出されてそこにやって来た。
 部屋にはアルコールの臭いが充満し、そこに排泄物の臭いが混じって酷い臭いになっていた。

 零九は白目を剥いて気絶していた。
 血の気の引いた青白い身体は脱力し、脱糞まで引き起こしており、自らの糞尿に塗れた姿を研究員が指を指して笑っていた。

「何をしたのよ。死にかけてるじゃない」

 ラディは文句を言い、零九に触れる。
 周囲に転がる酒瓶と、血の付いた漏斗。彼の口の中には引っ掻いた様な傷が無数にあり、肛門も酷く傷ついている。

「アル中にしただけだぜ?」

 ゲラゲラと笑いながらユウスケが答え、ラディはため息を吐き、零九の体からアルコールを抜いて行く。

「死なせるつもりが無いなら加減してって言わなかったかしら? 特にこの子は」

 致死量とも言える量のアルコールに、彼女は呆れてしまう。
 以前、確かに無理矢理酒を飲ませて急性アルコール中毒にし、その泡を吹いて痙攣する様を見て楽しんでいたが、失神してからも漏斗を使って体内に流し込み続けて脱糞するまでやるとは思っていなかった。

「これだけダメージを与えたなら、今日は休ませなさい。これじゃ、死ぬわ」

 とりあえずアルコールを完全に抜いた所で、ラディはユウスケに言う。
 彼は玩具を取り上げられた子供の様な顔をし、彼女を苦笑させる。

「仕方ないわね。代わりの女を用意してあげるから、それで我慢しなさい」

「お、マジで?」

「ええ。良いわよ」

 ラディは非常に軽くそんな会話をし、ユウスケは軽い足取りで部屋から出て行った。
 
 全身傷だらけの息子を見下ろし、彼女は優しくその頭を撫でた。

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