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いつもそこには、君がいて

第2章 2 水曜日


「そろそろ私だって楽したいの!」

 出てきたのは、そんなとんちんかんな理由づけ。

「えーっ、それが理由なんすか?」

 菊川くんは計算機を軽く机にほうり出し、背もたれにドサッと寄り掛かってしまった。

「まだ終わってないじゃないっ」

「もう俺、頭パンパンです。やーめたー。福田さーん、遊ぼ、遊ぼ」

「なにそれ、もう!」

 菊川くんはあっさり席を立つと、ブルゾンのポケットに手を突っ込みながらさっさと通用口から外に出ていった。

 一服、だ。


「あの……峰さん、あのこと菊川さんには言ってないんですか?」

 通用口を見つめたままの私に向かって、ちょっと心配そうに福田さんが聞いてきた。

「はい。なんか言えないでいるん……」

『福田さーん! 一服しよー!』

 私の言葉を遮るように外から菊川くんの声がした。

 ノーテンキな声が響く、響く。

「今、行きますって……。峰さん、すみません、ちょっと行ってきます」

 持ってきた段ボールをたたみながら、福田さんも外へと出ていった。


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