いつもそこには、君がいて
第2章 2 水曜日
「じゃ、帰りましょうか」
「はい」
バックヤードに戻った私は、鼻をかんで丸めたティッシュをごみ箱にポイッと捨て、机の上の書類をササッと片付けた。
一昨日とおんなじように、かばん一つで外に出たけれど、その胸の内は全く違って、なんだかすごく気分がいい。
「お待たせしました」
「って言ってもらうほど、待ってませんけど?」
「ふふふ、それもそうですね」
「さ、行きましょう」
駐車場に向かって歩く足どりもとっても軽くて、歩くのが妙に楽しくなる。
きっとそれは、一昨日といい今日といい、みっともない姿を見せてしまった福田さんと、こんなふうにあっけらかんと何気ない話ができているせいだろう。
仕事とは全く関係のない30代の無駄話をしながら歩いて行くと、駐車場のほんの少し手前で、どこからかカレーの匂いがしてきた。