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異種間恋愛

第21章 見えてきた現実

「いつまでここにいるつもりだ」
 ぶっきらぼうに言い放たれた言葉に私はうっかり手にしていた林檎を落としてしまった。
「え?」
「聞こえなかったか? 俺の体調はよくなったのに、何故まだここに居続ける」
 昨日一日休んだラドゥは実際に顔色も良くなっていたし、呪いなんて嘘のように元気に見えた。
「部屋から出てもいいの?」
「ああ。お前と一緒にいるのも、もう飽きた。さっさと出て行って好きな所へ行けばいい」
 シャツのボタンを留めているラドゥの横顔は冷たい。
 本当にもう私に飽きたのかもしれない。
 それにしても、飽きっぽいし我儘な王子様だ。
 ラドゥに対して抱いていた同情と愛しさがごちゃまぜになった感情のやり場に困ってしまった。
「でも……」
「そうだ。この重要な書類をここに置いていく。絶対に触るなよ。ここに書いてあることは事実だ。調べたいのはやまやまだが、俺は常に人に囲まれているから表だって行動はできない。いいか? 絶対に読むなよ」
「は?」
 ラドゥはそう言って数枚の紙をテーブルの上にのせた。見るなと言っているくせにご丁寧に封筒から取り出して、しかも表を向けて置いてくださっている。
 そのまま扉から出て行こうとするラドゥに唖然として動けないでいると、口元を意地悪く歪ませたラドゥが振り返って付け足した。
「でも、この書類はもう必要ないから、別になくなっていても気にはしないがな」
 意味深な言葉を残し、王子は消えていった。
 一体何なんだろう。
 扉がパタンと音を立ててしまったのを確認してから私は紙に手を伸ばした。隣りに置いてあったグラスに入ったオレンジジュースを少し端に追いやって、文字に目を走らせる。
「うそ……」
 そこには、昨日ストラスに聞いていたアッシュのことがかかれていた。
 アッシュの製造方法から今までの歴史。
 所々にラドゥのものらしき走り書きのような補足メモが書かれている。
 それによると、アッシュの製造過程で人体に有害な成分が排出されるらしい。製造がまだ増大していない今では民に危険が及ぶまでの毒は流出していないが、その代わりに工場で働く者たちには直接的に害がいっているという。
 本来、自然に存在するエネルギーをゆっくりと時間をかけて凝縮し人間に扱えるものにするのがアッシュの正しい製造方法だ。その方法は安全で人間に害はない。
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