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第1章 リセット

「なんかいいことあったの?」
玲奈は続けた。
「さっきから、ずっとニヤニヤしてるよ。」
「何でもないよ。」
今までにない大金を手にしたのだ。ニヤつくなと言う方が難しい。じゃあね、と言って彼女は部屋に戻った。次からは少しニヤニヤを気をつけてみるか。帰り道、そう心掛けた。

 数日後、くじを買った。また大金が入ってくる、スイッチのおかげだ。
 あんなに怪しく思っていたスイッチが今では愛おしくて仕方ない。これさえ有れば一生楽に生活出来る。正に金のなる木だ。
 あの男の言葉が蘇る。スイッチを手に入れて2週間が経っていた。あの男が言っていた期限の半分だ。どうしたらこのスイッチを返さずに済むのか考えた。答えはあっさり見つかる。

 そうだ。逃げればいい。あの場所で待っていると言っていた、それならあの場所に行かないならいいのではないか。
 単純すぎる発想だがこれが最も効果的に思えた。出来るだけ遠くに逃げよう。僕は新幹線の切符を買った。玲奈との2人分だ。

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