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桜の夢

第10章 50cm

「分かった。ありがとう、私のことを考えてくれて」


私は顔を伏せて、思ってもいないお礼を口にする。

その声は、とても自分で出したとは思えなかった。

もう流星の前にいたくない。

我慢していたのに、声が震える。

メガネをしているのに、視界がぼやける。


「じゃあ、私、帰るから…」


そう言って私は、家に向かって走った。

夜桜見物なんて、どうでもよかった。

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