雪月花
第6章 佐野美紀
昼休み、体育倉庫裏。
俺は今、佐野と向き合っている。
こいつの顔は計算された美しさで、俺はあまり好きではない。
いや、顔だけじゃない。
こいつは全身、計算尽くされている。
皆と同じジャージを着ていても可憐な女子を演じる―佐野とはそういう女子だ。
俺と付き合ったのも、その美しさの要素にしたかっただけだろう。
だが今、その顔は歪んでいた。
悲しみ、怒り、恨み、妬み…
何が入っているのか分からない黒い何かによって歪んでいた。
俺はそんな佐野を冷酷に見つめる。
「流星…今言ったこと本当なの?」
佐野の声は合成音の様に、ただ音を並べるだけ。
感情なんて入ってないかのように聞こえた。
「あぁ。もう1回言おうか?」
ちゃんとここで終わらせるんだ。
もう前に進むんだ。
「俺はもうお前とは付き合わない」