テキストサイズ

南の龍

第14章 分からない


どこまでいったって考えた末の答えは一つだった。

「分からない」

あるいは、知らない。

「刻」

「なんだ」

「私ら前に会ってんのか?」

一人で考えて分からないんなら聞くしかない。

「……」

でも、刻は答えてくれない。

その代わりのように意味の分からないことを言ってきた。

「思い出したのか?」

「なにを?」

「いや、何もない」

私はまた考える。


『思い出したのか?』

思い出す?

そんなの、思い出すことといえば私が四歳から六歳までの記憶がないときのことくらいだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ