南の龍
第16章 気持ち
「大丈夫か?」
刻が静寂を破るようにそう言った。
「うん」
刻が来てくれて少しだけ和らいだ恐怖心。
「ありがとう」
「あぁ」
まだ「好き」という気持ちを伝える勇気も度胸も何もないけどいつか伝えたい。
と、少しだけ思う。
「なぁ、なんで来てくれたんだ?」
「なにがだ?」
「こんな時間に呼び出されたって普通来ないだろ」
「お前が呼んだんだろ」
「たしかに、そうだけど……」
「……」
「刻は普通じゃない」
ボソボソと私はそう言った。
「何か言ったか?」
刻には聞こえなかったらしい。
「何もない」
「…そうか」