南の龍
第3章 高野家
私はトキを家に入れたのはいいがどこに案内すれば良いのか分からず、玄関でずっと仁王立ちしている。
自分の部屋に招くのはなんか違うし、リビングに招いたら招いたで“みんな”に何を言われるか分からないし。
私は、至極迷っている。
すると、トキが急に声をかけてきた。
「入らないのか?」
「……入りたいか?」
「……」
「また、無視かよ。……っておいなんで人様の家に勝手に入ってんだよ!」
「……」
トキはまたもや私を無視して中に入っていった。
いや、待て
「リビングの場所知ってるのか?」
私がそう問うと、トキは『なぜ知らないんだ?』というような顔で私を見てきた。
こいつマジ腹立つな。
「ちょ、マジでなんでしってんの?」
「お前の親父と俺の親父は知り合いだ」
「それで?」
「それ以上もそれ以下もねぇよ」
「でも、だからってなんでトキがうちのと仲いいんだよ」
「……仲がいいと言うかよくしてもらってる」
「は?私知らなかったしそんなこと」
「……知らね」
うん、トキの無視という行為がなくなったことは嬉しいけど、“南高をしきるやつ”がこんなに近くにいるとは思わなかった。