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南の龍

第5章 兄貴

刻は何も言わずに抱き締めてくれた。

何も言わないけど優しさは充分に伝わってくる。

キスされたときもだけど、なぜか懐かしい。

こんなことされたの異性から……いや、同姓もだけど初めてなのに。


「お前らそーゆう関係か?」

いつの間にドアを開けていたのか美織がいた。

「ち、違う」

私は、刻から離れて否定した。

「怪しいな〜」

「違うって言ってんじゃん」

「まぁ、いいけど」

「いいっていうか違うから」

「子供作るのはまだ早いぞ〜」

美織はニヤニヤしながらそー言った。

「だから、違うっつてんだろうか!!」

私は、ちょっとキレぎみにそー言って刻と美織を部屋から追い出した。

ドアを強めに閉めて、ベッドに寝転ぶ。

ため息が勝手に口から出てきた。

刻に抱き締められていた温かさがまだ残っている。

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