南の龍
第5章 兄貴
「……ストーカーではない」
「じゃぁ、なんだよ」
「……」
「……」
「……」
「……なぁ、真面目な話。」
「……」
「私、昔の記憶ないんだよ」
「……」
「4歳から6歳くらいまで」
「……」
「ないっていうかなんとなくしか思い出せない」
「……」
「母さんがその時期に事故で亡くなってて、私も一緒にいて頭打って記憶ぶっ飛んだらしい」
「……」
「母さんの顔もなんとなくしか思い出せない」
「……」
「もちろん写真とかあるけどさ……」
「……」
「写真の中の顔しか分からない」
「……」
「私、親不孝な子供なんだよ」
「……」
なぜ、こんなことを刻に話したのか分からない。
でも、誰かに話したかった。
ずっと胸に閉まってた思いだから。
なぜ、それが刻だったのかも分からない。
ただ、刻に聞いて欲しかった。