テキストサイズ

第3章 三

けっきょくあの日は、そのまま撮影は終了。

僕は彼に食事を奢ってもらい、そのまま帰宅した。

別れ際彼が、僕の指を握った。

骨張った細い指で。

「撮影まだ続ける気があるならあのビルに来て」

彼はそう言うと、去って行った。

僕は正直迷った。

もう行かない方がいい。

僕の中で警笛が鳴る。

 何かされたわけではないし、彼は優しい。

僕を気遣ってくれる。

バイト代も日払いでなんの問題もない。

それでも戸惑ってしまう。

行くな、行くなと心が命ずる。

それなのに僕は。

ここにいる。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ