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第1章 一

「指、綺麗だね」

突然そう言われて振り向くと見知らぬ男が立っていた。

歳は20代のように見える。

男の言葉に戸惑う僕を気にすることなく、隣に腰を下ろす。

「突然なんだけど、君バイトする気はない?」

は?

何言ってるんだ?

男は自分の素性を明かす気はないらしく、こちらを見つめている。

「どう?」

「意味わからないんだけど」

男は微笑む。

「バイトはバイトだよ」

だからそれじゃあ意味わかんないって。

そう思い、口を開くより先に男が耳元で囁いた。

「興味があったらついておいで」

そしてじっと顔を見つめられる。

冷たい瞳だ。

表情は動くのに、瞳は動かない。

男は立ち上がる。

そして一度こちらを見た後は、そのまま出て行く。

僕の返事も待たずに。

僕は立ち上がるとそのまま男の跡を追う。

まるで魔法にかけられたように。

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