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第1章 一

男に導かれ辿り着いたのは、繁華街の中にある寂れたビルだった。

外から見た感じは廃墟のようで。

こんな処に来てしまったことを僕は早くも後悔しはじめていた。

僕は、男のことを何も知らない。

そして今、何かあっても誰も助けてくれないだろうと思うような場所にいる。

男は僕のことを見ない。

 声をかけられたあの店からここまで、男は一度も振り返らなかった。

歩調はゆっくりで見失わないようにしてくれていたようだが、僕がついて来るか気にはしていない様子だ。

確信があったのか。

当の僕にしても何故ついて行くのかわからぬままに跡を追って来た。

男は階段を上がる。

静まり返ったビルに足音が反響する。

 まるで心霊スポットに来た気分だ。

足音を響かせながら男は上がり続ける。

 やがて最上階に辿り着くと、はじめて男が振り向いた。

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