テキストサイズ

RAIN

第7章 諦められない想い《翔side》

雨も今日は情緒不安定なんだろうか?
だけどこのタイミングの雨は、俺にとってはありがたいかもしれない。俺が泣いても雨でカモフラージュしてくれる。俺のみっともない姿を他人に晒されないですむ。





どんなルートで歩いたか、全く把握してなかったが無事に帰宅できた。……いや、全くの無事かと問われると否になるだろう。なぜなら俺は全身ずぶ濡れだったからだ。せっかく拓海さんに洗濯してくれて、挙句に風呂までいれさせてくれたというのに。これじゃ好意を仇で返してるようなものだ。
しかし今更それに気をやむ必要はない。だって拓海さんと会うことはないのだから……。

そう思った瞬間、またしても鼻頭がつんと痛くなった。

鍵を開け、中に入る。今日は誰もいないらしい。まぁ、その方が好都合だが。

本来は濡れた服を脱ぎ捨て、すぐに熱いシャワーでも浴びた方がいいのだろうが、ほとんど無気力に近い俺は何もする気にならず、それでも濡れたままでベッドに横になるのだけは避けたいと、制服を乱暴に脱ぎ捨てて、タオルで雨で濡れたままの髪の毛を適当に拭いた。

自分の部屋に入り、タオルを首に巻きつけたまま、ベッドへとダイブした。
何も考えられない。考えたくない。だって考えることとしたら、さきほどの拓海さんの言葉だけだからだ。そして考える必要もない。あれはそのままの意味だ。解釈もなにも、拓海さんが放ったあの台詞はストレートに、会いたくないと告げていた。
要は俺の初恋はみじめに失恋した、それだけの事実だ。


……はぁーっ。とにかく疲れた。もう思考を放棄する。
今はひたすら眠りたい。何もかも忘れるほど爆睡したい。

俺は意識を捨てて、泥のように深い睡眠に堕ちた。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ