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RAIN

第7章 諦められない想い《翔side》

翌日の朝は最悪だった。

結局昨日は泥のように寝ていた俺は途中、夕食だと起こされたが、食欲のない俺は睡魔もあって断った。
しかし姉貴は夕食を呼びにきただけではなく、相変わらずの小言も飛んできた。服を廊下に投げ散らかすなといった内容を、甲高い声で説教をはじめてきた。
だが激しい頭痛に苛まれていた俺は、姉貴なんか無視して再度睡眠に勤しみ、そして今現在である朝を迎えた。


「……最悪だ……」
本日の第一声。
頭痛は相変わらずだし、何よりも身体が怠い。
これは俗にいう風邪というものだとぼぉっとした頭で解答に導く。
「休もうかな……」
風邪なんだから堂々と休める。現に身体が熱い気がする。計ってないが多分微熱程度の体温ではないだろうか。

しばらく布団の中で踞っていたが、最終的に出した決断はベッドから飛び出すといったものだった。
予備用の制服を取り出し、覚束ない手で着替えるとゆっくりした仕草で一階へと降りた。足を一歩動かす度に頭がズキズキと痛みを訴える。

鞄をソファに投げるように置き、簡単な洗顔と歯磨きを終え、気怠い体調のままダイニングに向かえば、味噌汁をよそっていたお袋と目が合う。
「どうしたの? 顔色が悪いみたいだけど?」
さすがは母上だ。体調悪いことを瞬時に見破った。……まぁ隠してるわけでもないから、気づいて当たり前か。
「……熱計ってみたの?」
心配したお袋が俺の額に掌をあてる。
「……少し熱いわね……。今日は休んだら?」
やっぱり熱あったのか。
「いや、たいしてひどくないし行くよ」

お袋の心配はありがたいが、今日は学校にいってる方が気が楽なのだ。楽というと語弊がある。家でただ寝ているだけだと暇すぎて、思い出さなくていいことまで勝手に思い出してしまう。

昨日の今日だから、いやでも蘇ってしまう。拓海さんに言われた拒絶の言葉。

だったら学校にいってる方がいい。学校にいれば、家で横になっているよりはくだらないことで気が紛れる。駿平と馬鹿話に付き合って誤魔化すことだってできる。一時逃れにしかならなくても忘れられるのなら、学校にいた方がいい。


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