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RAIN

第8章 告白《翔side》

俺が起きたのを確認した拓海さんが近づいて、掌を俺の額に当てる。
「少し下がったかな……?」
「おかげさまでだいぶ楽になりました」
起きかけであるため、まだ頭がぼぉーっとしているが、頭痛はいくらか落ち着いてきた。
「それはよかった……。神崎くんが起きたらと思って、簡単な卵雑炊を作ったんだけど食べる?」
その台詞に俺は感動にも似た幸せを感じてしまった。
「もちろん食べます!」
つい声をあげて即答してしまった。
そんな俺の返事に拓海さんは苦笑を零しながらも、その雑炊を用意すべく立ち上がった。


拓海さんが用意してから時間はそんなにかかっておらず、数分もしないうちに醤油をベースにした美味しそうな香りが充満してきた。
あ、俺が起きた時に鼻腔を刺激した正体は雑炊だったのか。

用意ができた拓海さんが顔だけをのぞかせてきた。
「そっちで食べるかい? それともこっちで食べるか?」
こっちとはテレビがある居間の方を指している。
「えっと……それじゃそっちで」
拓海さんの問いに、俺はほんのちょっと迷いながらも居間で食べる方を選ぶ。
俺の返事に拓海さんはこくりと頷いた。
「わかった。それじゃこっちにきてくれるか?」
今度は俺が頷く番だった。


布団から這い上がり、俺は指示通り隣の居間に移動する。
すでにテーブルの上には湯気のたった雑炊とお茶が乗っていた。
俺は雑炊がおいてある方に座ったのを確認した拓海さんは薄く微笑を浮かべて「どうぞ」と述べた。
「……いただきます」
両手を合わせていただきますをして、すぐに レンゲで雑炊を掬う。
「熱いから気をつけて……」
確かに湯気が半端ない。相当熱そうだ。フーフーと冷ましてからそっと口に運ぶ。
俺が口に入れた瞬間、拓海さんの心配した姿が目に入った。







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