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RAIN

第8章 告白《翔side》

「味……大丈夫かな?」


不安気に見守る拓海さんの姿が可愛いと感じてしまった。

「美味しいです」
速攻で答えれば、今度は安堵した拓海さんの表情に、こっちまで笑顔が自然と出てしまう。

実際美味しかったのだ。といた卵と長ネギや細かく刻んだ白菜などの野菜が入っていて、味付けはシンプルな醤油の雑炊はお世辞ではなく美味だった。
料理なんてしたことのない俺からして、料理ができる拓海さんは尊敬に十分値する。

綺麗で優しくて、しかも料理得意なんて完璧じゃないか。本当に理想の恋人像だ。拓海さん以上の人なんて絶対にいない。大袈裟ではない。

「絶対いいお嫁さんになれますよ」
つい無意識に出た自然の言葉に、拓海さんが動きを止める。
「……へ? お嫁さん??」
眉の中央に皺が寄っている拓海さんに、俺は慌てて謝罪した。
「あ、ごめんなさい!」
拓海さんはどこからどう見ても成人男性だ。綺麗な顔立ちをしているが、誰が見ても男と確認できる。そんな相手に“嫁“認定するなんて失礼にも程がある。無意識とはいえ、なんて無礼な発言をこぼしてしまったんだろう……。

俺の謝罪に拓海さんは苦笑で返してきた。責めることはない拓海さんの優しさに救われた思いだ。

「でも本当に美味しいですよ。俺なんか料理なんて出来ないから憧れます」
「大したもんじゃないよ。ずっと一人暮らしだから、嫌でも料理しなくちゃいけないから自然とできるようになっただけだ」
謙遜して薄い照れ笑いを浮かべる拓海さんに俺は見惚れてしまった。

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