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麗しの蓮の姫~炎のように愛して~【BL】

第2章 麗しの蓮の姫

 壮年の国王は暗愚ではないが、生来病弱で、確固とした意思というものがない。右議政がいなくては大臣たちに声をかける順番一つ自分で満足に決められないといった優柔不断ぶりである。
 このままでは、自分たちはのけ者にされ、右議政だけが殿下の信頼を良いことに我が物顔で国政を牛耳るのではないか。そんな声なき声が日々、募り、やがて右議政の失脚という世にも怖ろしく無惨な謀に発展していった。
 ある日突然、潤俊は国王に対する謀反の罪を問われ、義(ウィ)禁(グム)府(フ)に囚われの身となった。取り調べという名の拷問は数日に渡って行われたものの、潤俊は最後まで自らの罪を認めようとはしなかった。結局、捕らえられて五日という異例の速さで、潤俊は処刑された。
 悲劇はそれだけにとどまらず、潤俊の遺した家族たちをも見舞った。潤俊の処刑後、三日めの夜、盗賊の一団が主を失った屋敷を襲った。物盗り目的の凶行で、右議政の家族どころか、使用人すべてに至るまで皆殺しにされてしまった。
 放置された遺体はすべて無惨な有り様であったという。右議政の長男、穏やかで思慮深い人柄で将来を嘱望されていた申明賢(ミヨンヒヨル)も惨殺された。ただ、その中で捕盗庁(ポトチヨン)の調べでも、最後まで亡骸の見つからなかった者が二名いた。右議政の次男、当時、九歳であった申英真(ヨンジン)とその乳母である。
 幼い少年とその乳母がどうなったのか。その後の調べでも詳しいことは明らかにならず、二人のゆく方は杳として知れなかった。とはいえ、屈強な若い家僕が何人もいたにも拘わらず、皆、一瞬の中に惨殺されたのだ。それほどの凄腕で冷酷な盗賊団がたかだが女と子ども一人を易々と逃したとは思えず、女は奴らに慰み者にされ、一緒にいた子どもは死んだ後、いずこかに打ち捨てられたのだろう。推測にはすぎなかったが、そういうことで事件は落着した。

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