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麗しの蓮の姫~炎のように愛して~【BL】

第3章 孤独な貴公子

「そうそう、肝心のものを渡すのを忘れてた」
 秀龍の大きな手のひらには不釣り合いなほど小さな鏡。
「どうしたの、これ」
 浄蓮が覗き込むと、秀龍がコホンと咳払いした。
「見れば判るだろう、鏡だ」
「そりゃア、俺だって、それくらいは判るよ。でも、何で? っていうか、誰にやるんだよ?」
 ははーんと、浄蓮が悪戯っぽい顔で頷く。
「遅まきながら、兄貴もやっと目ざめたんだな。で、誰だ? ウチの見世は皆、顔は結構良いけど、中身は今一つ―。特に稼ぎ頭の明月は止めておいた方が良い。ヒステリックだし、嫉妬深いしさあ。そうそう、チェウォルって若い妓は気立てが良いよ? ちょっと大人しすぎるところがあるけど、黙(だんま)りの兄貴となら案外、ウマが合うかも」
 一人で滔々と喋る浄蓮を、秀龍が睨みつけている。
「おい、そのお喋りな口を閉じないか。私がいつ、妓生にやると言った? これは、お前に持ってきたんだ」
「は?」
 素っ頓狂な声を出したかと思うと、浄蓮が腹を抱えて笑い出した。
 笑い転げる浄蓮の前で、秀龍は憮然としている。
「何がそんなにおかしい、浄蓮」
「だってさ、兄貴が俺に女が使う手鏡をくれるなんて。幾ら何でも、これが笑わずにはいられる?」
 秀龍はムッとした顔で言った。
「今のお前は申英真ではなく、浄蓮なのだろう? たった今、お前自身がそう言ったばかりではないか。お前があくまでも自分は女だと言い張るのなら、私が手鏡を贈っても別におかしくはない」
「ま、理屈はそうかもしれないけどさ。どうも、兄貴から手鏡を貰うだなんて、居心地が悪くて背中がむずむずするよ」

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