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麗しの蓮の姫~炎のように愛して~【BL】

第3章 孤独な貴公子

 浄蓮が秀龍に近づき、下から見上げるようにしながら囁く。唇に浄蓮の人さし指が当てられたまま、浄蓮の蠱惑的な瞳と秀龍の知的な黒瞳がしばし見つめ合った。
 浄蓮はもちろん、長い黒髪を後ろで編んで垂らした娘姿である。着ているチマチョゴリは木綿の質素なものだが、色はチョゴリが生成、チマは明るい牡丹色と娘らしいものだ。
 その浄蓮といかにも両班の若さま風の上物のパジチョゴリを纏った秀龍がひしと見つめ合う様は、さながら絵にでもしたいようだ。どちらも美形だけに、実に様になっている。
 さしずめ身分違いの恋に身を灼く悲恋の恋人たちとでもいうところか。
 誰がどう見ても誤解する、美しすぎる場面である。
 しばらくして、浄蓮がの手が放れると、秀龍は顔を真っ赤にして怒鳴った。
「お、おい。お前っ。一体、どういうつもりだ? こ、こんなことをすれば、余計な誤解を招くではないかッ。しかも、ここは町中だぞ」
「別に良いじゃないか。幾ら俺が否定しても、翠月楼では、とっくに兄貴は俺の恋人ってことになってるぜ」
「な、なっ」
 上にナントカがつくほど真面目で堅物のこの義兄の許容範囲を超えたらしい。秀龍は意味不明の言葉を呟き、顔面蒼白になっている。
「わ、私がお前のこ、恋人ォ~?」
 そんな秀龍を見て、また浄蓮が人の悪い笑みを浮かべたそのときだった。
 妓房がひしめく色町の往来を、向こうから一人の若者がゆっくりと歩いてくるのが見えた。その見憶えのありすぎるくらいある人物を見た時、浄蓮の中で閃くものがあった。
 浄蓮が突如として傍らの秀龍の腕を掴むと、強い力で引き寄せた。
 浄蓮の珊瑚色のふっくらとした唇が秀龍の唇にそっと重なった。
「ム、ムグゥ」
 と、またも秀龍は訳の判らない言葉を呟かざるを得ない。秀龍は〝おい、何をする。気でも違ったか、放せ、止めろ〟と訴えているのだが、哀しいかな、見かけはどこまでも女に近くても、内面は間違いなく男の浄蓮は力が強い。秀龍が懸命に身を離そうとしても、その腕は絡みついたように離れない。

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