テキストサイズ

麗しの蓮の姫~炎のように愛して~【BL】

第3章 孤独な貴公子

 聞き様によっては皮肉にも取れる科白だ。
 流石に浄蓮もこれにははらはらしながら成りゆきを見守った。
 が、秀龍は眉一つ動かさず、鷹揚に応える。
「私は父の力を借りて世渡りをするつもりは毛頭ありません。自分自身の力で、行けるところまで行くつもりでおります」
 準基はどこか投げやりな態度で頷いた。
「それはご立派な心がけだ。私もあなたくらいの歳で初めて受験して、来年が二度目の受験ですよ。私は文科を受けるつもりですが、お互いに頑張りましょう」
 言い終え、準基は初めて浄蓮を見た。
「浄蓮、少し話がある」
 浄蓮は唇を噛みしめた。
「私には何もお話しすることはありません、若さま」
「大切な話なのだ」
「ですから、私には何もお話しすることはないと―」
 浄蓮に皆まで言わせず、準基が叫んだ。
「その男のせいなのか?」
「それは、どういう意味でしょうか?」
 判っていながら、浄蓮はここでも知らないふりを通した。世の中には知らない方が結果として良いことがある―。
「私は回りくどいのは苦手だ、単刀直入に訊く。その男は、浄蓮の何なのだ?」
「任どの。幾ら何でも、その訊き様は、あからさますぎはしないか」
 言いかけた秀龍を手で制して、浄蓮は平然と断じた。
「お察しのとおりですわ。この方は―皇家の若さまは、私がずっとお慕いしてきた方です」
「お、お前―」
 秀龍の顔が紅くなり、次いで白くなった。
 浄蓮は素早く秀龍に意味ありげな一瞥をくれ、視線を準基に戻した。
 準基から見れば、こんな何げない視線を交わし合うのさえ、恋人同士の親しげな合図に見えただろう。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ