
麗しの蓮の姫~炎のように愛して~【BL】
第5章 天上の苑(その)
「判った」
差し出された大きな手に自分の手を重ねる。流石に大人の男だけあって、容貌は優しげでも、準基の手のひらは分厚く大きかった。
それに比べ、発達途上の浄蓮の手は幾分、まだ小さめだ。準基の手に包み込まれた瞬間、温かなぬくもりが浄蓮の手をふわりとくるみ込み、その意外な温かさは、浄蓮の心までをも温かいもので満たした。
準基に手を引かれて、見世の前に行くと、そこには一頭の白馬が繋がれていた。
真っ白な毛並みの美しい馬だ。かつて右議政を務めていた父は名馬の愛好家であり、たくさんの優れた馬を持っていたが、その父ですら、これほどの名馬は手に入れられなかった。
まるで、この世の生きものとは思えないほど―神の化身、もしくは、天界からの御遣いではないかと思ってしまう。
浄蓮は声にならない感嘆の声を上げた。あたかも魅入られたかのように美しい白馬を見つめた。
窺うように準基を見ると、彼が微笑む。
「この子は大人しい馬だ。そなたを蹴飛ばしたりはしない」
浄蓮は恐る恐る白馬に近づき、傍までくると、逞しくしなやかな体を両腕で抱えるように抱きしめた。
「よしよし、良い子ね」
幼い頃から、馬は好きだし、物心やっとついた歳ではや、子馬を自在に乗りこなしていたほどだ。父の影響を受け、乗馬は名手とまではいかずとも、得意であった。
微笑ましい光景を、準基は満足げに眺めていた。彼の眼に、浄蓮はどこから見ても動物好きの心優しい娘に映っていた。
白馬の黒い瞳が濡れたように光り、何かを訴えかけているようだ。
浄蓮はふいに無性に愛おしさが込み上げてきて、白馬の鼻面を撫でた。
差し出された大きな手に自分の手を重ねる。流石に大人の男だけあって、容貌は優しげでも、準基の手のひらは分厚く大きかった。
それに比べ、発達途上の浄蓮の手は幾分、まだ小さめだ。準基の手に包み込まれた瞬間、温かなぬくもりが浄蓮の手をふわりとくるみ込み、その意外な温かさは、浄蓮の心までをも温かいもので満たした。
準基に手を引かれて、見世の前に行くと、そこには一頭の白馬が繋がれていた。
真っ白な毛並みの美しい馬だ。かつて右議政を務めていた父は名馬の愛好家であり、たくさんの優れた馬を持っていたが、その父ですら、これほどの名馬は手に入れられなかった。
まるで、この世の生きものとは思えないほど―神の化身、もしくは、天界からの御遣いではないかと思ってしまう。
浄蓮は声にならない感嘆の声を上げた。あたかも魅入られたかのように美しい白馬を見つめた。
窺うように準基を見ると、彼が微笑む。
「この子は大人しい馬だ。そなたを蹴飛ばしたりはしない」
浄蓮は恐る恐る白馬に近づき、傍までくると、逞しくしなやかな体を両腕で抱えるように抱きしめた。
「よしよし、良い子ね」
幼い頃から、馬は好きだし、物心やっとついた歳ではや、子馬を自在に乗りこなしていたほどだ。父の影響を受け、乗馬は名手とまではいかずとも、得意であった。
微笑ましい光景を、準基は満足げに眺めていた。彼の眼に、浄蓮はどこから見ても動物好きの心優しい娘に映っていた。
白馬の黒い瞳が濡れたように光り、何かを訴えかけているようだ。
浄蓮はふいに無性に愛おしさが込み上げてきて、白馬の鼻面を撫でた。
