一万回目のプロポーズ
第2章 8年の溝
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数学が終わり、最後の国語も終わってしまった
いや、やっと終わってくれた
早く家に帰ってゴロゴロしよっと
鞄に荷物を詰めていると、俊司とその男友達が喋っていた
「俊ちゃん、今日一緒に帰ろーぜっ」
「ん、わかった」
俊司が鞄を背負ったとき
「あ、やっぱりいいや、俊ちゃんには先客がいるからなぁ…」
俊司の友達が、教室の外へ目をやった
あたしもついそっちを見てしまう
ドアの向こうから、可愛らしい顔が覗いていた
あの子は
畑中千尋(ハタナカ チヒロ)
顔は人形みたいにクリクリした感じで
体は細くてスタイルがいい
千尋とは、あたしも俊司も保育園から同じだった
「ああ…」
俊司は今思い出したかのように、間抜けそうに口を開けた
そしてそのまま、千尋の元へと歩いていく
「俊ちゃんは保育園の時、畑中とばっかり遊んでたもんなー!!まじイチャイチャ見せつけんなよおっ」
「うるせーな」
友達がそう大声を出すので、俊司は少し照れ臭そうにした
『…』
違うよ…