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掌の浜辺

第1章 春 - story -

 コツン
 ストン 「ふっ」
 思わず苦笑いがこぼれてしまった。ヒ-ルをはいて、ブランドもののショルダ-バッグを抱えて、寮に帰ろうというのだ。ここまで準備がいいと、もう何と言っていいのやら困りもしてしまう。
 「行こうぜ」
 俺は恥ずかしい気持ちでいっぱいだった。しかし、他のみんなは完全にギャルだからわからないとか、何かあったときのために男子部員を1人連れていくのだから大丈夫だとか言って背中を押してくる。それはお前らが決めることじゃないと思ったのだが、罰ゲ-ムだから受け入れる他はなかった。
 俺は立ち上がり、それらをひつらえてこいつとともに寮へ向かっていった。

 ポツポツ 「早く来い」
 そう言われても、ヒ-ル+雨で早く走れるわけがない。しかも、女性服を着ている。周囲からの視線も気になる。
 (…ぶっ倒れそ)


降り始めたその粒子たち
人間にとっては
嫌なもの
ただ
植物や土にとっては
恵のもの
だから
一粒一粒しみこんでいくそれらのように
自分自身の中に取りこみたい
そう思ったとき
俺は植物なのかよ
という突っこみを入れてしまった
…恥ずかしい

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