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掌の浜辺

第1章 春 - story -

6.理由

外は暗くなり冷えてきた
雨も少しずつ降る量を増して
着ている服をぬらし始める


 「ふぅ」
 何とか無事に寮までたどり着くことができた。ほっと胸をなでおろす。
 「じゃあ戻るぞ」 「じゃ」
 俺は階段を上り始めた。
 「待て!服とかばんは?」
 「着替えてから取りに行く」
 それ以降、返答はなかった。しぶしぶそれを承諾したのだろうか、気を重くしたような感じでそいつは学校の方へと歩いていった。

 カチャ
 ギュィ-
 俺は部屋に入って着替えを始めた。ついでに髪も洗う。また、顔のメイクは洗顔料で何とか落とすことにした。
 さっぱりしたところで、俺は傘と服とバッグを持って部室に置きっ放しのものを取りに戻った。
 ギュィ-
 ストン
 「じゃ」
 俺は荷物を抱えて家路につこうとしたとき
 「おい!忘れてるぞ」
 と声をかけられたので、そちらを振り向くと、今さっき持ってた服とかばんを渡された。
 「着た人のだぞ」
 「はは…」

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