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掌の浜辺

第1章 春 - story -

9.明と暗

面接の電話を入れるとき
このどきどきした緊張感を
私はどうしてもぬぐうことができない


 「お電話かわりました。中上と申します」
 「あ。西海浜大学、法学部、法律学科、4年の、平石です。あの」
 「はい」
 「昨日の企業説明会に行ったとき、案内が載っていたところになかのうえ法律事務所さんがあるのを見て」
 「はい」
 「そちらに面接しにお伺いしたいと思い 今日このような電話を入れたのですが」
 「ああ、そうだったんですか。あのう、大変申し訳ございませんけど、昨日に締め切ってしまいまして」
 「はい」
 「これからも採用を行うということができなくなってしまったんですよ」
 「あ…そうですか」
 「誠に申し訳ございません」
 「大丈夫です」
 「よいところが見つかることをお祈りしております。それでは、失礼します」
 「失礼します」
 電話を切る。私の気持ちはどんよりしてきたけど、無性にお酒が飲みたくもなってきた。
 (メ-ルファイルを開く)

 「かんぱ-い!」
 グビッ
 ゴクゴク

 「最近どうしてる?」
 「ど-もしてません。家でごろごろ。暇な毎日です」
 「なら、今度遊びに行っか?」
 「すいません。今金欠なんですよ」
 「そっか」
 「小野里先輩はど-してます?」
 「俺?リハ研で罰ゲ-ムやらされた」
 「え?」 「どんな罰ゲ-ムやったんですか?」
 「おい!質問に答えろよ」
 ゆうこりんは、ナオトの発言を振り切って小野里先輩にそのことを詳しく聞いた。
 「これ」
 彼は携帯電話を取り出し、デ-タフォルダに入っている写メ-ルを見せてくれた。

 「何何?」
 りょうこりんは、あたしに身を寄せてきた。
 「これって小野里さんですか?」 「え-!何これ」
 「お」
 りょうこりんは、それを見て少し引き気味のリアクションをしていた。


素直になるということは
嘘でぬり固めたことを言う
じゃなくて
本当に思っていることを
素直に言うことだと思う
けれど
それがあだとなったときのことを
考えたら
怖くて何も言えなくなってしまう
だからより控え目になる
素直になりたくてもなれない
小心者
…だよね

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