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掌の浜辺

第1章 春 - story -

8.ア-・ユ-・レディ-?

その途中で
ポケットの中から
携帯電話の鼓動が聞こえた


 シュンさんからだ。
 「もしもし」
 「くはあ」
 俺は戸惑った。声が死んでいる。
 「大丈夫すか?」
 「腹減ったあ」
 という返事は、力なくしぼんでいた。
 「何も食ってないんすか?」
 「あぁ」
 肯定なのか。それとも、思わず口からこぼれた言葉なのか。その区別がつかなかった。
 そのあとは、しばらく雑談が続く。

 「あ-。そ-だ」
 と小声でつぶやいたあと、オレはこう言った。
 「さっき小野里先輩から今日夜飲み会すっか?って誘いがあったんだけど、おまえ来れる?」
 「あ。今日はちょっとパスしていいすか?」
 「わかった。じゃ-また」
 「あい!」
 (酔わせる作戦、失敗)

 音楽が市街地に鳴り響く中、私は家に帰っていった。それまで、小野里くんからメ-ルが来ていることには気がつかなかった。
 件名【今日】
 本文【夜飲み会すっか?】
 返信メ-ルを作成する。
 件名【遅れてごめん >○<】
 本文【ちょっと遅くなっちゃうけど、い-い?(._.】
 10数分くらいたったあと、返事が来た。
 件名【いいよ】
 本文【じゃ、7時から2時間 style vogue にいるから用事終わったらメ-ルか電話くれ】
 携帯電話のボタンを押す。
 件名【うん♪】
 本文【わかった☆ ≧▽≦*】

 時間なったので、私はそこに電話をかけた。
 「お電話ありがとうございます。なかのうえ法律事務所の上野です」
 「もしもし。あの、今日のお昼に面接のことで電話した者ですが」
 「はい。少々お待ちください」
 (緊張する)



を表現するとき
喜・怒・哀・楽
の4つだけなら足りない
のかな
優しさはどこに入るの
怖さは、悲しみは、後悔は
つらさは、もどかしさは、緊張するのは
その4つのどれかに変わったとしても
同じものと見なすのは
どうなのかな
なんて考えている
…私がいる

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