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掌の浜辺

第1章 春 - story -

1.散る

雪のかおりがまだほのかに残っている
木々には葉っぱがつき始め
再び季節がやってくる


 ザワザワ
 何やら学生課が騒がしい。
 「何で廃部ですか?」
 「嘘の人数を申告していたことが判明しまして、正規部員が8名だとこのような対応を取らざるを得ないのですよ」
 「まだ増えるかもしれないじゃないですか!部員が」
 サ-クル事業部の職員はあきれていたが、こう続けた。
 「それでは、来月まで待ちます。いいですね?」
 「はい!」
 そして1ヶ月後…
 野球同好会、廃部決定。

 「まじかよ…」
 「うん。でも仕方ないよね」
 オレは受け入れられなかった。8人集まったのはいいものの、これではただの暇人の集いだ。サ-クルでも何でもない。怒りだけがこみあげてくる。そんな自分に腹が立つという悪循環の中、ケンイチが優しく声をかけてきてくれた。
 「先輩、ちょっくら学食行きません?」
 「おまえ授業は?」
 「いいんすよ。どうせ出席取らない授業ですし」
 「じゃあ、おごってもらうわ」
 「えぇ!?」
 と、冗談も交えながらオレらは食堂に向かっていった。

 「学祭の出展どうする?」
 「ん?サ-クルじゃなくても店出せんの?」
 「たぶん。でもうちら最後なんだしさ」
 「なら、一応実行部んとこ聞きに行っか?」
 「うん☆」
 「じゃ、お先」 「ごめんね。おつかれさま」
 「お疲れ様です」
 (ナオトは他の女子部員を口説くのに夢中だ)

 「ケン~今どこ?」
 見かけはギャルだが、実際は違うらしいケンイチの彼女。
 「学食」
 「一人?」
 「いや。シュンさんといる」
 「そう。じゃまたあとで~」
 「あい!」
 ピコピコ
 パタン


それぞれ
思い思いに過ごしている
こんな雰囲気がオレは好きだ
でも
裏を返せば
ばらばらになってしまっている
こんな雰囲気がオレは嫌いだ
それは
ただの依存にすぎない
と、わかっているのにも関わらず
こういう感情がわきあがってくる
弱さ、そして強がりのせい
…なのか

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