精霊と共に 歩睦の物語
第13章 土御門
拝殿に向かう真っ直ぐの砂利道
鳥居 一歩 手前に立つ歩睦。
その場所は“神の道”と呼ばれる真ん中
遠くから、音楽が聞こえる。
(聞いたことがある…ような…無いような…)
お入りください…
拝殿の方から声が聞こえてきた。
直ぐ脇に立っていた楓は、膝を付き頭を下げる。
歩睦の足が動き出す。
鳥居の中央を潜り、
敷き詰められた砂利の上を歩いているのに、
まったく踏みしめる音がしない。
拝殿にたどり着いた瞬間、中に入っていた。
(あれ…靴は?…)
足元を見ると、足袋をはいていた。
あれ?っと思う間もなく、自分の姿が礼装に変わっている事に気づく。
袍(ほう)の袖が思った以上に軽くて驚いた歩睦。
歩睦… 久しいのう…
声がまた聞こえてきた。
顔を上げると、開いていた御簾(みす)が閉まっていた。
御簾の前におかっぱ頭の侍女が立っていた。
「………」
うまく、返事ができず黙っていると
「アユム様 そんなに緊張されなくても、よろしいですよ」
侍女が着物の袖を口に当て、笑っている。
「あ…はい…申し訳ありません
僕は大巫女様とお会いするのは、初めてな気がして…」
頭をかきながら、侍女に頭を下げる歩睦。
「私は侍女です。頭をお上げください」
侍女が困った顔をしている。
「えっと…どう…」
急いで、顔をあげ御簾の方を向く。