自殺旅行
第4章 個室生活
午後。内庭開放。
「いいよいいよ。ちょっとくらい大丈夫だよ」
看護師が手招きをする。
外。ちょっとだけ出た。ヒョロ助てんて~には内緒です☆
鉄格子も柵も窓もない空を見上げた。外だ。地面だ。土だ。芝生だ。・・・・・・柔らかい。
一ヶ月ぶりの外。嬉しい。
何これ? 私はクララか?! 初めて歩いた子か!!!
フェンスの近くまで行きたい。フェンスの向こうに行きたい。もっともっともっともっともっと遠くに行きたい。
看護師にフェンスの近くまで行ってみて下さいと、お願いしてみた。
フェンスの高さを知りたいから。
「いいよ。一緒に行こうよ」
看護師と一緒にフェンスまで行った。『パンダちゃん』と『HRちゃん』も一緒について来ました。
・・・・・・なるほど。そこそこ高さはあるのね~・・・・・・でも、このくらいなら・・・・・・。
「私、多分このくらいならフェンス登れそうです」
「あははは! 無理でしょう!」
「じゃあちょっとだけ登ってみてもいいかしら~?」
「いいよ~♪ ムリだろうけど~」
「では、失礼して・・・・・・」
許可も頂いたので遠慮なく・・・・・・。私はフェンスを両手で掴み、右足の爪先をフェンスに入れて・・・・・・。
「!!!!!!!!!!!! 分かった!!! 分かった!!! そこまで!!! 仮名さんストップ!!!」
看護師は慌てて私の足首を掴み、引き摺り下ろした。
ヒョイヒョイ登った私。 運動神経は悪くはないんですよ~♪
「あ~~~ビックリした~ ・・・・・・すいません! 正直、舐めてました! ・・・・・・よし! もう戻ろう! ・・・・・・ヒョロ助先生には秘密でお願いします!」
『パンダちゃん』と『HRちゃん』が無邪気に笑っています。
「ええ分かってますよ★ 言ったら私はきっと独房戻りでしょうから」
「あ~~ビックリした・・・・・・」
看護師は本気でビックリしたようです。まあね、目の前で患者脱走! なんて・・・・・・シャレにもならないもんね★