井上真緒編
第2章 2
真緒も、物件探しをしたり、リフォームを手がけたりしたが、実際は4年目で新米同然では、どれだけ戦力になっていたかは分からなかったが、仕事にやりがいは感じていた。この日は、ほとんど外回りで、会社に戻ったのは、みんなが帰った後だった。真緒は、新宿の駅に向かって、歩いていた。会社からは、駅から5,6分だった。小倉とは、最近会ってないのに、こんなに遅くまで仕事なんかやっていたら、本当に駄目になるなと思った。その時だった。遠目に小倉が、女性と一緒なのが見えた。その女性は、真緒の同じ課にいる坂下チリ子だった。声を掛けるわけにもいかないし、じっと見ているのも変だと思ったので、その場はやり過ごしたが、これはもう本当に駄目かもしれないなと思った。ただ、浮気だとかそういった責め方をするつもりはなかった。うまくいっていない原因は分からなかったが、それは、どちらかに原因があるような質のものではなくて、相性のようなものなのではないかと真緒は思っていたし、小倉もそう思っているのではないかと思っていた。ただ、何とも不思議な感覚なのだ。とにかくうまく行かないと言う言葉が当てはまるように思っていた。