井上真緒編
第3章 3
化け物「ねえ、あなた、引っ越ししようと思ってるの」
真緒「ああ、ああ」という変な声を上げて驚いてしまった。何とも子供のような声で、その化け物は話しかけてきたのだ。
化け物「ねえ、そう思ってるんでしょ」
真緒「なによ、あんた」
化け物「私の名前はチアキだよ。話しかけてくるのをずっと待っていたんだよ」
真緒「何言ってるのよ。化け物が。あんたなんかに話しかけるわけないじゃない」
チアキ「化け物。ははは、この私が。あなた何も分かっていないわね」
真緒「どうせ、地縛霊かなにかでしょ。何か未練でもあるの」
チアキ「未練。なにいってるのよ。そんなものないわよ。あなたは神々にそんなことをいうの」
真緒「神。あなたが」
チアキ「八百万の神々に対して、失礼だといってるのよ」
真緒「自分の格好見てみなさいよ。到底神には見えないわよ」
チアキ「ふん。まあいいわ。あなた、引っ越しするつもりなのよね。どこに行くの、私もついていくから」
真緒「騙そうと思ったって無理よ。地縛霊は、いつまでもここにいるんでしょ」
チアキ「はははは、だから私は、地縛霊ではなくて、神々なのよ」
真緒「そんな神々がいるはずないじゃない。そうか。私が何やってもうまくいかないのは、みんなあなたのせいだったんだ」
チアキ「何言ってるの。結婚が駄目になりそうなのが、私のせいだっていうの。あなたは、きっとあの男と結婚しても幸せになれないわよ。相手がよくなかっただけなんじゃない」