井上真緒編
第1章 1
夕方になると親戚の人たちを中心にみんな一杯始めていた。もちろん、それほど大人数ではなかったが、ときどき笑い声も漏れてきた。それでも、どこか真緒に気を使ったような、抑えた声だったように思えた。真緒も、あまり気を使ってもらっても心苦しかったが、だからといって自分自身が笑顔を振りまける状態ではないのだからしょうがなかった。夜になって、真緒の恋人の小倉旬がきてくれた。小倉は、会社の同僚だった。ただ、部署が違ったので、それほど会社では、あうということは偶然でもなかった。小倉は、くると線香を上げて、ずっと母親の遺影を見ていた。そして、真緒に綺麗なお母さんだねといった。小倉は、食事を用意してもらったので、それを食べた。真緒の親戚の人たちに近いところにいたので、食事をした後には、一杯付き合わされていた。小倉も、真緒の母親の葬式だったので、どうしたらいいかわからなさそうに、とまどいながら、飲んでいるようだった。それでも、夜の10時ぐらいまで一緒に飲んで、帰ることにしたようだった。真緒に近づいてきて、ちょっといいといったので、真緒は、親戚のおばさんに後を頼んで、外へでた。駅に向かって歩きながら話をした。