向かいのお兄さん
第21章 神さま
「美咲ちゃん…」
『ぁた…しが…寝坊なんて…してなかったら…』
雪が降っていなければ
もっと早くに家を出ていれば
車のエンジンが掛かっていれば
徒歩でも真っ先に駅に向かっていれば
途中でこけなければ
もうちょっと速く走っていれば
直也の車に
乗り込まなければ…
『ごめんなさぃ…ごめんなさいごめんなさい…直也…ごめんなさ…』
「誰も…悪くないよ」
違う
違う
違う
全部あたしのせいなんだ
全部全部全部
あたしの…
『直也ぁ…』
「…」
あたしは和樹に
背中をポンポンと叩かれたまま
ずっとずっと
泣きつづけた