向かいのお兄さん
第24章 今この時間
「はい、直也の家~」
和樹はハンドルにもたれかかり、助手席に座る直也の様子を窺った
直也は窓から、自分のマンションを眺めている
『…直也?』
「ここ、俺ん家じゃない」
『…』
家まで
覚えていない
『…違うよ…ここ、直也の家…』
「ううん、俺ん家は一軒家だし」
直也はうーんとため息を漏らしながら
窓枠に肘をついた
「…でも、直也の家だよー?」
「だって…」
『…』
和樹はあたしの方を向いた
どうする?と言いたそうだ
『ごめん、間違えた。直也の家はどこ?』
「…〇〇町」
『〇〇町か…』
結構、遠いんだな…