向かいのお兄さん
第24章 今この時間
「〇〇町の行き方なんて知らねーよ」
和樹は投げやりにそう言った
多分、イライラしてるんだと思う
『ナビ使えば余裕でしょ?』
「知らねーもんは知らねーの!!直也はここが家なの!!」
『…』
前に聞いた話…
直也は、働き始めたときから一人暮らしを始めたそうだ
その働いていた記憶がない今、直也の家は、〇〇町にある実家
つまり、あたしたちとはなかなか会えない場所へ
直也は行ってしまうんだ…
それが嫌な和樹は
知っているはずの道も、知らないものだと通し
直也とのさよならを
遠回しに拒絶している
「じゃあ電車で帰るから…ここでいいや。ありがとう」
直也はニコッと笑うと、車から下りた