向かいのお兄さん
第2章 向かいのお兄さん
あたしはスウェットの下に、七分袖の上
という、何とも部屋着すぎる格好のまま家を出た
今日は土曜日だから、学校は休み
おかげで京饅頭を届けさせられることになったんだけどね
お届け先はお向かいの佐藤さん宅
ここがただの家じゃなくて、造花店を経営している
『うっくしゅん!!』
ああ寒い
まだ5月の入りたてだから、かなり冷える
あ、造花店っていうのは、いろんな式典なんかで飾られる作り物の花を取り扱う店らしい
あたしは興味ないし、詳しくは知らないけどさ
ピンポーン
佐藤さん宅は横に長かった
造花を運ぶトラックを置くスペースや、花を造る作業場がその大部分を占めていて
シャッターが上がれば、外からはまる見えのつくりになっている
ピンポーン
家の人は、おっちゃん、おばちゃん、そんでそこの息子夫婦
その人たち以外でも、10人程度が働いていて
なぜか若くて男前な殿方がたくさんいる
そこは嬉しいよね♪
ピンポーン
ちなみに、造花っていうと何だかメルヘンなイメージあるけど
全然違うよ
その造花を飾るための土台として、鉄パイプ運んだり、組み立てたりしてるから
働いてる人はみんないい体格してる
ピンポーン
『…』
もう4回もインターホンを押してるけど、一向に誰も出て来ない