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澪―みお―

第3章 葛原 幸次

そもそもの美智子との結婚も、大きな賭けだった。
それまで父子家庭だったから、父親の執着はおれに向いていた。
今までも何人か女性を紹介したことがあった。
彼女たちは会った途端にダメだった。
初対面で、あの阿修羅像を生き写したような父親が無言で見つめてくるのだ。
そんなの女じゃなくても逃げ出したくなる。
当たり前だ。
今度こそはと美智子を連れて行く時も、一抹の不安はあった。
でも、今回もダメだったらおれは美智子を連れて駆け落ちするつもりでいた。
そうでもしなきゃ、一生パートナーを迎えられない気がしたからだ。
意気込むおれをよそに、父親は美智子に会った途端、人が変わったようにニコニコと笑っていた。
拍子抜けした。
あっさりと結婚を認めたのだ。
途中で態度が変わるのかと思いきや、結婚してからも変わらない。
おれはわけが解らなかったが、美智子と一緒になれたことで次第に父親のことなんてどうでもよくなっていた。

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