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澪―みお―

第3章 葛原 幸次


宮内圭。
前に一度、澪の紹介で会ったことがある。
彼は、その時の第一印象のままの好青年だった。
今更、家に何の用事があるというのだろう。
彼はおれに深く一礼すると、口を開いた。

「澪さんの…お爺さまはいらっしゃいますか」

「…いるけれど、とても会話が出来る状態じゃないよ」

それでも構いません。彼はそう言って、父親に会うことを望んだ。
彼と父親の対面は、数分で終わった。
席を外して欲しいと言われたので、話の内容はわからない。
それでも、彼と対面した後の父親は深刻な顔をしているように見えた。
そして、父親が姿を消した。
行方不明になった。
捜す気にはなれなかった。
一気に心の重荷が取れた気がした。
ふと美智子は元気にやっているのかと思った。
美智子を苦しめた父親はいない。
手紙を出してもいいのだろうか…
しばらく考えていた。
数週間後に、吹っ切れた。
返信が来なかったら諦めればいいじゃないか。
そうして美智子宛ての手紙を出したことによって、美智子も行方不明なことを知ることになった。
なんだか同時にすべてを失った感覚に陥る。
もう疲れてしまっていた。

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