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澪―みお―

第3章 葛原 幸次


「大丈夫よ、お父さん」

それが、澪がおれに掛けた最後の言葉だった。
翌朝には、澪は姿を消していた。
代わりに昨日一日出掛けていた父親が、リビングにポツンと座っている。

゙可愛い可愛い澪…もうしばらくしたら行くからね゙

父親は一点を見つめ、そんな事ばかりを繰り返している。
その数日後だった。
波打ち際に澪の遺体が発見されたのは。
変わり果てた澪の姿。
肺いっぱいに入った海水。
細い首筋には、痣が残っていた。
警察は言う。
事故でしょう、と。
とんでもない。そんなことあるハズない。
おれの言葉は、虚しく空を切るばかりで取り合ってもらえなかった。
父親なんだ。絶対に。
…元凶は……おれ。
言わなければこんなことにはならなかったんじゃないか?
元凶は馬鹿なおれだ。

しばらく経ってから、ようやく美智子に手紙を出せた。
返信はない。
父親も変わらず…正確には、澪がいなくなった日から変わらず一点を見つめ、うわごとを繰り返している。
数年経った頃だった。
澪の゙友達゙宮内圭が家にやってきたのは。

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