澪―みお―
第1章 ワタシという入れ物
ある時ここに訪れた老人には見覚えがあった。
白髪に混じり、所々黒い毛も見えるその老人は、名前を葛原征四郎というらしい。
どうやら大事な孫娘を失ってしまっているようだった。
ただし、その老人の手でだ。
葛原越しにミエる孫娘は、長い黒髪をサラリと翻している。
ワタシと年が近いのだろうか?
葛原は、孫娘を愛しすぎていた。
愛玩具のように扱っている様子さえミエた。
そして、自分勝手にも゛いつか他の男に取られるくらいなら…゛という想いで、孫娘自身の長髪で絞め殺していた。
そして海に沈めた。
…待って
それはワタシのこと?
その瞬間だった。
ワタシという存在に興味を持ったのは。
葛原は、ワタシの前から消えていた。